昆虫の名前を知ることは、人の名前を知ったことをきっかけに親しくなるように、自然と仲良くなる上でとても大切なことです。しかし、昆虫に興味(きょうみ)を持って、昆虫の名前を調べようとしてもなかなか名前にたどり着けません。
せっかく、興味を持った方が挫折(ざせつ)しないためにも、参考になれば幸いです。
今回は初級編ですので、本の紹介の前に、そもそも、どうやって名前を調べるのかを紹介します。
1.昆虫をじっくり観察(かんさつ)しよう
写真を撮るのは最後にして、まずは、見つけた虫を100円ショップの蓋付きカップなどに入れてじっくり観察しましょう。色、形、匂い、鳴き声など五感を使って、昆虫を観察してください。あなたがここで感じたことが、後で名前を調べるときの大きな助けになります。
色や模様(もよう)に目が行きがちですが、これが落とし穴だったり…。
実物を見て、スケッチをすることも、とても重要です。下手なスケッチで構いません。また、気付いたことをなんでもメモしてください。野帳(やちょう)に書くといつでも見返せますし、専門家ぽくてテンションが上がりますよ。
最後に写真を撮りましょう。しっかりとピントを合わせて、色々な角度から撮ってください。スケール(定規とか)を入れると大きさを調べるのに役に立ちます。
2.絵合わせ同定をしよう
図鑑の写真を見て、種の当たりをつけることを絵合わせ同定(えあわせ どうてい)といいます。実物や写真を見ながら、図鑑をパラパラとめくりながら似た種を探します。図鑑には全ての種が載っていないので、これに似ているけど違うかも?ぐらいまで分かれば十分です。無理に種まで落とす必要はありません。
インターネットで検索するのも良いですが、間違いが多かったり、何故、その種と分かったのかが書いていないので、正直、おすすめしません。グーグルレンズ、INaturalist、Biomeといった生き物の画像検索アプリも大変有用ですが、まずは図鑑を開いて、自分なりに考えながら探すことが大切です。どうしても分からないときに補助的に使うのが良いと思います。
昆虫全般が載ったおすすめの図鑑は以下の4冊です。
小学生向けの図鑑ですが、日本を代表する昆虫学者達が本気で作成した図鑑です。生きた状態の昆虫の写真(白バック写真)がなんと2800種類が掲載。狂気を感じます。この内容で価格も2500円ほどと安価です。
フィールドへ持っていけるポケットサイズの図鑑。現地で図鑑を開いて、調べて、ボロボロになるまで使い倒しましょう。身近にいる1900種の昆虫が掲載されており、最初の1冊としておすすめです。
身近にいる2621種の標本写真が掲載されています。標本にチャレンジしてみたい方におすすめです。
身近にいる750種が大きな写真で掲載されています。少しずつ知りたい方におすすめです。
3.図鑑の記述を読む
よく似た種を見つけたけど、合っているかどうか分からないときは、絵だけでなく、図鑑の記述を読みましょう。迷いがちな、昆虫の体の部位の名前は図鑑の最初の方に書いています。
例えば、コクワガタのメスとヒラタクワガタの雌はよく似ています。
日本の昆虫1900などには、上翅の質感で見分けられると書いています。個人的には、前脚脛節(ぜんきゃくけいせつ)が内側に湾入するかどうかや、体の厚みでも見分けることができます。図鑑や著者によって見る場所や表現が異なるので、色々な図鑑をしっかりと読むことが大切です。
4.専門書を読んでみる
ここまでくれば、図鑑を使って、ある程度、正しそうなグループや種名(和名)までたどり着けるようになったと思います。また、図鑑には目的の種が意外と載っていないことにも気づき始めたのではないでしょうか。
ここからはもっと深みにはまっていくための図鑑を紹介します ズブズブズブ...
・ハンドブックシリーズ
専門書はちょっと...という人におすすめの文一総合出版のハンドブックシリーズ。
・専門書
あるグループに絞って書かれた図鑑です。高価ですが本気でやるなら絶対に必要な文献です。ちなみに図鑑がないグループはたくさんあって、それらは論文を読み漁るしかありません。
日本の大きな蛾(マクロレピ)はほとんど載っています。蛾を始めるなら必携です。
日本に生息するゴミムシダマシが全種掲載されています(出版当時)。
これをみれば日本のゴミムシダマシのすべてが分かるといっても過言ではありません。
日本に生息するカミキリムシが掲載されています。地理的変異・色彩変異もしっかりと掲載。記述もかなり面白いです。
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